2017.04.06

「相手のことを好きになること」 会話をきっかけに人生を変えた人たちに聞いてきたー第1回目 黒島ゆりえさん


会話で人生をかえた

水澤陽介
はじめまして、フリーライターの水澤と申します。これまでに、沖縄に住むひとたちを数々取材してきまして、日々“会話”の難しさを感じています。百人百様の生き様を伺うことは、簡単のように見えて奥が深い世界。その中でも特に「会話」を通して人生を切り開いてきた人物にスポットを当てたコラムをお届けします。

第1回目は、大学在学中に、ゆんたく※をきっかけに広報活動のサポートを任され、現在はFMぎのわんで「モーニング8」水曜日担当としてラジオパーソナリティを務めている黒島ゆりえさんです。

「ゆんたく」とは
直訳すると饒舌・おしゃべりという意味です。ただ、街のいたるところでみかける、おじぃおばぁのゆんたくには、その場のひとときを楽しむといった趣が強いような……きっと、沖縄らしい人の温かみは、ゆんたくをきっかけに育まれているかも?と筆者は考えています。

「ゆんたくが嫌い」から見つけた相手との距離感のつかみかた


(朝焼けに照らされながら、FMぎのわんのモーニング8がはじまります)

「ゆんたくって、相手のことを好きになることからはじまると思うんです」

はじめて会う私の目をじっとみて、言葉の端々には「にかっ」と笑い、「わぁ」と驚きの表情を浮かべる黒島さん。そんな彼女の天真爛漫な姿を見に、FMぎのわんのリスナーが会場に遊びに来ることもしばしば。

彼女いわく、会話を強く意識したのは高校の頃。良くも悪くも目立つ存在だったために、先生からの風当たりも強かったと話します。

「私が喋っていないのに先生から『静かにしなさい』と注意されるような子でした。だから、おしゃべりって損だなって。だったら、静かに過ごせばいいのかと思い、黙っていたら心配する先生もいた。結局のところ、相手との会話や距離感を間違わなければ、自分らしく居てもいいんだと気がつきました」(黒島)

多感な思春期には、自分本位の考えから相手本位にシフトすることは案外難しいことですが、彼女は「相手との気持ちいい関係性とは」ということにヒントを見つけていったようです。

メディア出演で感じた「楽しさは、人に伝染していく」


(大学1年生のとき、学内の広報としてラジオ出演の様子)

大学進学後すぐに、ゆんたくをきっかけに転機を迎えます。アルバイトとして参加していたオープンキャンパスで、大学案内していた彼女の姿を見た広報課のかたから、「広報を手伝ってみない?」と声をかけられたのです。

「たとえオープンキャンパスであっても、高校生からすれば大学生に声をかけられると萎縮しちゃうじゃないですか。だから、楽しい時間を過ごしてもらうために、歌を歌ったりして相手が緊張しないようにしました」(黒島)

そんな大役、無理じゃないかと不安になったものの、「声を掛けられるということは、あなたには素質があるんだよ」と添えられた言葉に引っ張られ、広報を手伝うことになります。
小冊子、ラジオCMなどさまざまな活動をしていくなか、ラジオカーで来たレポーターにインタビューされたとき、ゆんたくの魅力に引き込まれていくのでした。


(大学在学中の、ラジオカーのレポーターとの一幕)

「とにかく、レポーターのかたが楽しそうに笑っていて。もう、わたしたちにもその楽しさが伝染していったんです。もちろん、相手を楽しませることには技量も必要だけど、人との出会いを大事にすることならわたしもできるかも、と思いました」(黒島)

黒島さんには才能があったからじゃないの?、という私の問いに、「わたし、おしゃべりすることが向いている、と勘違いしていただけかも」と照れくさそうに話します。そうして「憧れのあの人みたいに」という想いをゆんたくを通して叶えていくのでした。

「会話は、日々の積み重ねで上手くなっていく」


(FMぎのわんは、2015年10月に開設されたばかりのコミュニティラジオです。)

現在、彼女はモーニング8の水曜日担当「水曜日のユリステル」として活躍していますが、もともとのきっかけは「コルネとサンドのお店pippi」のオーナーの一言でした。

「わたしの活動履歴をFacebookにアップしていたら、オーナーに『FMぎのわんが開局するけど、紹介してもいい?』って。だから、ラジオパーソナリティになれたのも、人と人の繋がりがあってこそです」(黒島)

ラジオパーソナリティとして、はじめての放送日。自分らしさを発揮するどころか、うまくしゃべりたい、そんな欲求が強く出たあまりにぜんぜん話せなかったといいます。

「放送的に大丈夫かな、こんなことをいったら嫌われるかな、とまた自分本位になってしまいました。だから今ではそうならないように、今までに放送されてきた私自身の声を音源としていただき、聞きなおしながら反省しています。会話力は日々の蓄積で上手くなっていくものですよね。楽しくは前提として、こうした積み重ねも大事だなと感じています」(黒島)


(取材当日、飛び込みのリスナーがいても、アドリブで会話できるまでになった黒島さん。)

「あっ、日常生活でもコミュニケーションは鍛えられますよ」とニコニコしながら彼女は、職場の近くにあるファミリーマートを例に出して教えてくれました。

「中城村にあるファミリーマートの定員さん、すごく印象的なんです。まず、しっかり目をみて『ありがとうございます』って。わたしだけではなく、職場のみんなにも同じ対応でして。当たり前のことですが、意外と毎日行くところだし、わたしなんて無意識におろそかになっていることも。だから、しっかり顔をみて挨拶できることを続けるだけで相手には好印象です」(黒島)

「個性的で、努力家だから。このまま自由にやっていけばいい」


(ラジオパーソナリティとミキサー役の掛け合いも、モーニング8のおもしろみの1つです)

ラジオ開局から彼女を見届けてきた株式会社FMぎのわんの山内代表は、これからの活躍を期待していると話します。

「はじめて会ったときから、『この子は個性的だな』と思っていたけど、さらに努力家でもあるんです。リスナーとのやりとり、僕とのコンビネーション、ミクスチャーなどアグレッシブに会得してこれた子だから、おもしろい素材。彼女は、自由にやっていけばいいと思います」(山内)

一度っきりのゆんたくでも大事に、丁寧に。相手のことを好きになって、共通点はなにかを見つけることで自分の道を切り開いてきた黒島さんだからこその、会話にかける深い思いがありました。

(2017年3月22日放送「モーニング8」の様子。動画提供:FMぎのわん様)

FMぎのわん インフォメーション
住所:沖縄県宜野湾市喜友名1039番地 Gタウンビル2F
ホームページ http://fmginowan.com
お問い合わせ 797@fmginowan.com


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水澤 陽介

- mizusawa

新潟県出身、87世代。2013年から沖縄に移住してから地方の魅力に気づく。人を活かすライティングを心がけ、ウェブと紙を中心にライターを行なっています。 人好きだから、イベント企画からコーディネートもライフワークをして実施中。