2016.09.23

沖縄のソウルフード「天ぷら」は甲子園の時に食べる?上間弁当天ぷら店に聞くその理由とは


はいさいヒガシーサーです。突然ですが、あなたは沖縄でいう「天ぷら」と、本土で出てくる和食の「天ぷら」の違い知ってますか?沖縄の天ぷらは衣が分厚くて、中味の具材は魚、田芋、サーターアンダギーなど和食の天ぷらとは味も違います。

同じ「天ぷら」でも、なぜここまで違うのか?今回は行事やイベントに欠かせない沖縄の天ぷらの謎を、県内で「上間弁当天ぷら店」を4店舗展開する株式会社上間フードアンドライフの上間社長にお話を伺ってきました。

uemasyatyou県内4店舗の上間弁当天ぷら店を切り盛りする上間社長

 

沖縄てんぷらと和食の天ぷらはなにが違う?

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ー沖縄の天ぷらと和食の天ぷらは、見た目も味も大きく違うと思いますが、沖縄天ぷらの特徴ってどこにありますか?

上間社長:沖縄天ぷらのルーツは諸説あるんですが、弊社の創業は戦後、祖父が営んでいた刺し身屋から始まりました。そのとき生のお魚は傷みやすく、それで食材をムダにしないために天ぷらを始めたのが始まりです。沖縄は気候が暖かいですから、食材を油で揚げて少しでも傷まない工夫から始まった料理だと聞いています。

和食の天ぷらには「走り・旬・名残」と「出会いもの」を頂くのが「粋」とされていますが、沖縄天ぷらは季節の食材を楽しむ要素はあまりありません。親戚が集まるとき、人が集まるときにお客さんをもてなす料理として家庭で出されていた「天ぷら」が今の沖縄天ぷらのルーツです。

懐石料理の一項目で提供される天ぷらと違い、家庭から始まった沖縄天ぷらは、庶民をベースに独自進化した揚げ物文化の一項目として県民に愛されてきました。

 

沖縄天ぷらの衣をサクサクさせる工夫とは?

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ー天ぷらのこだわりはありますか?

上間社長:実は天ぷらって蒸し料理なんです。食材を衣で包み込むことにより、食材を傷めずにプリプリした食感や、ジューシー感を残すことにこだわっています。

そのため食材を包む衣はとくに重要で、調理中に衣が破れたりしないような調理法や、サクサクした食感を楽しめるようにこだわっています。サクサクした天ぷらの特徴は「衣が立っている」と表現するんですが、油と衣のタネの温度差で起こる化学反応で、天ぷらを包んでいる衣の表面のつぶつぶが大きくなり「サクサク」した食感を作り出します。

 

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その状態を上間弁当では全店舗でいつでも作れるように、温度管理や作業工程を徹底しています。また、県産食材も積極的に使うようにしていますよ。

 

美味しい沖縄天ぷらの見極め方とは?

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ーおいしい天ぷらを見分けるポイントってあるんですか?

上間社長:衣が立っている点以外にも美味しい天ぷらを見分けるコツがあります。沖縄天ぷらって黄色いのが当たり前ですが、実は和食の天ぷらのように衣が白っぽいものもあるんです。弊社ではそれを「白い天ぷら」と呼んでいるんですが、白い天ぷらを出してるお店の天ぷらは美味しいです。

天ぷらは油料理ですので、やっぱり油が酸化してくると天ぷらの衣が黄色くなります。新しい油で揚げたものは衣がうっすら透明で白いんです。弊社はなるべく美味しい天ぷらを召し上がって頂けるように油の管理も徹底し、適宜新しい油に入れ替えるんですが、「白い天ぷら」は朝一番(各店舗のオープン時間)しか作れないんです。

その理由は、朝が一番油のコンディションがいいからですね。それと天ぷらに包まれる食材も一番いい状態です。上間弁当天ぷらの登川店は朝5時からオープンしてますが、オープン時間の天ぷらを一度食べると驚きますよ。

 

様々な意味が込められ、沖縄で愛されている天ぷら

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ー天ぷらってお土産に持っていくイメージがあるんですが、それも沖縄独特ですよね。とくにどんなシチュエーションで食べられることが多いんでしょうか?

沖縄天ぷらは親族が集まるとき、会社で集まるとき、地域で集まる時など大勢の方がいらっしゃる場面で注文をいただくことが多いですね。沖縄の天ぷらには空腹を満たすこと以外でも、意味があるんですよ。

おめでとう、ありがとう、がんばろう、お疲れさん、いろんな場面で天ぷらが使われています。

「さとうてんぷら」とも言われるサーターアンダギーはおめでたいイベントに欠かせませんが、花が開いたサーターアンダギーは実は女性を表しているんです。だから結納などに使用されるものは花が開いていないとダメという地域もあります。諸説ありますが、このように沖縄天ぷらには意味が込められているものも多いんです。

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最近では学校の先生方が注文することも多くて、学校の試験時期に注文が増えたりします。会社の決算時期にも注文が増えます。お客さまにお話を聞くと、残業や忙しい時期に「みんなでがんばろう」という意味合いで天ぷらを注文されるようです。

一番沖縄らしさを表してるのが「甲子園」ですね。沖縄代表校が試合をするときは天ぷらの注文が増えます。県民性の高いイベントや行事事に「沖縄天ぷら」はとても相性がいいんです。そういう料理ってなかなかないので、とても面白いですね。

ただ天ぷらを食べるだけではなくて、ワイワイしながら食べる楽しさがあるのも、沖縄天ぷらの特徴かもしれません。

 

沖縄天ぷらは地域の文化が詰まったソウルフード

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沖縄天ぷらはただの料理ではなくて沖縄文化そのもの。

手土産や差し入れとしても喜ばれるし、リーズナブルに胃袋を満たしてもくれます。お祝い事や甲子園の応援にも欠かせない沖縄天ぷらは、日本の天ぷらとは違うソウルフードなんだなと改めて感じることができました。

沖縄で暮らす人々の歴史と想いが詰まった沖縄のあちこーこーの天ぷら。あなたは最近食べましたか?

この記事を読んだ後は、「衣が立っている」サクサクの沖縄天ぷらを探しに上間弁当天ぷら店に足を運んでみるのはいかがでしょうか?朝イチがおすすめですよ!


【取材協力】
株式会社上間フードアンドライフ(上間弁当天ぷら店)
[HP]https://uemabento.com/
[TEL]098-937-9477

ライター:ヒガシーサー(比嘉研仁)
ブログ:https://higashisa.com

 

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